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月のワルツ(3)

二 月の宮殿(チャンドラ・マハル)の王子様

 真っ赤なキノコの傘の下で踊っていたのは、蝶々とかぶと虫だった。
 私はその中をすり抜けるように走った。あの、何でも知っていそうなうさぎがなんとなく怖かった。
 蝶々のシフォンのドレスがひらりひらりと翻るたびにその陰からうさぎが出てきそうで、かぶと虫の虹色タイツがきらきらと光るたびにうさぎの目が光るような気がして、とにかく夢中で走る。かぶと虫が持っている細く長い剣に、いつ刺されてもおかしくない。
泣かないように頑張って目を見開いたまま走る。
そして不意に視界が開けた。傘とシフォンと虹色の世界が終わったのだ。
私の前には立派な服を着た、綺麗な男の人が立っていた。
「こんばんは、メリッサ」
「…!」
やっと見つけた。
「見つけた…なんでこんなところにいるの?私、ずっと探したよ?」
「探した?僕はずっとここにいたのに?」
彼の後ろにはいつの間にか壮大な宮殿が広がっていた。大理石のように真っ白で、月のせいで先ほどのテーブルと同じく蒼にしか見えない。
「ここは…?」
「月の宮殿(チャンドラ・マハル)」
ということはこの人は月の宮殿の王子様なのだろうか。
こんなにこんなに、あの人に似ているのに。あの人にしか見えなくて、同じ声で私の名前を呼ぶのに。
見つけたと思ったのは、間違い?
「僕と、踊っていただけますか?」
王子様は跪いて私の手を取る。気づけば蝶々とかぶと虫が踊っていたワルツがまた聞こえ、私たちはすべるように踊りはじめていた。

神崎 瑠珠 * 月のワルツ * 23:32 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

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