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月のワルツ(4)

三 宇宙(そら)を行く神秘の船

 「あなたは、月の宮殿(チャンドラ・マハル)の王子様なの?」
 踊りながら私は聞いた。
 王子様は微笑んで頷く。
 「じゃあ、あの人はどこにいるの…?」
 「気になる?」
 私は首を振った。そんな簡単なものではない。
 「探してるの」
 「どうして?」
 「どうしてって………」
 探しているのに、何か理由はあったのだろうか。
 「探しているうちに、理由を忘れた?」
 「違うの…」
 何か大切なことを忘れている気がする。
 「例えば確固たる理由があったとしても、それが今も存在しているとは限らない。この霧の中で探すことは困難なのだし」
 いつの間にか、私たちを白い霧が取り巻いていた。
 ふわふわとまとわりつく。白い、と言ったが月の光のおかげでその白も蒼に染まっている。
 「メリッサ」
 王子様がまた私の名前を呼んだ。
 「…」
 「ほら、飛ぶよ」
 例えば「走るよ」というのと同じように、全く当たり前のように王子様は言い、私たちは宙に浮いた。
 「ええっ!?」
 「驚くことはない。僕と一緒なのだから」
 月の宮殿(チャンドラ・マハル)の王子様なら空を飛ぶのは当たり前なのだろうか。
 私たちは踊りながらぐんぐん上昇し、ついに霧も森も眼下に見下ろすくらいの高さまでやって来た。
 月がものすごく近くに見える。
 今日は完全な円だった。
 「どうしたの?」
 「月が、あんまり蒼いから…」
 「そうだね」
 私が踊るのを止めてじっと月を見つめていると、王子様は私の顎に手を添えて自分の方に向けさせた。
 「でも月がこんなに蒼いのも今日だけ。明日はまた違った月になる。明後日は雲のせいでその姿を消す。その次は欠けた月が昇る。
 それと同じ。世の中に変わらないものは何一つないよ、メリッサ。
 僕が君の愛しい人でないと、どうして言える?」
神崎 瑠珠 * 月のワルツ * 18:52 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

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