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月のワルツ(5)

終 彼女は本物を探し続ける

 私はしばらく迷った後に、王子様の手を払った。
 「メリッサ?」
 「貴方じゃないわ」
 言葉に出すと、はっきりと確信が持てた。
 王子様は不思議な顔をする。
 「何故?」
 「だって、心が反応しないもの」
 「心?」
 「そうよ」
 頭がはっきりしてくる。
 「貴方と一緒に居て、確かにあの人に似ているし、素敵な人だとは思うけど、私の心が反応しないの。好きだと思えないの」
 「…」
 「心が反応しないものは仕方ないわ。貴方ではないということよ。
 王子様だろうとなんだろうと、関係ないの。私の心を動かすことが出来るのは、あの人だけよ」
 「愛しているのは、僕ではないの?」
 「そうよ」
 「本当は僕かもしれないのに?メリッサ、君の心が何かに騙されているという可能性は?」
 「あるかもしれないけど、ないわ」
 「…?」
 「知らないの、王子様?
 愛することは、信じることよ」
 ぐにゃり、と王子様の顔がゆがんだ。
 あっと思う間もなく身体は浮力を失い、どんどんと落ちてゆく。

 気がつくと、私は元の森の中にいた。
 王子様もうさぎもいない。月の宮殿(チャンドラ・マハル)もない。
 相変わらず月だけが煌々と蒼く輝いていた。
 私は立ち上がり、また走り始める。
 世界でたった一人、私の心が反応するあの人のところへ。


― 月のワルツ 完 ―

神崎 瑠珠 * 月のワルツ * 12:45 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

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