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魔女とロマンスの詩 〜グンデン・ダーリーダの物語(3)

 シンデレラはしばらく呆然とした。
 本当にいきなりふってわいたこの魔女とやらと猫は、自分の何を知っているのだろう。
 「シンデレラ。貴女は王子様に会って、一瞬で恋におちて、そして結ばれて幸せに暮らす…っていうストーリーは信じられないかしら?」
 「信じられないわ、そんなもの。あるわけないもの」
 「どうしてないって決めるの? まだ決まってもいないのに」
 「だって、現実問題無理だもの」
 「王子が貴女の運命の人だという可能性があるかもしれないのに?」
 「そんなものはないわ」
 「だめよ、そういうの。自分の中の可能性をちゃんと探してあげなさい。
 継姉のどちらかが選ばれて、負け犬のようにお払い箱の自由を得るのと、自分が選ばれて堂々と自由を得るのと、どちらがいいと思うの?
 それとも、貴女、本当に継姉たちが選ばれると思っているの? 選ばれなくて帰ってきたら、また一層ひどい日々が待っているわよ」
 「…」
 シンデレラはさすがに考え込んだ。
 「努力をしてみなさい、シンデレラ。そのための手助けならしてあげる」
 「…何をすればいいのよ」
 初めて少し話に乗ってきたシンデレラに、グンデン・ダ・リーダはにっこりと微笑んだ。
 「そうこなきゃ。
 まずはねえ、ネズミと蜥蜴を6匹ずつ取ってきてもらおうかしら」
 「は!?」


 「…ったく…舞踏会とネズミと蜥蜴に何の関連性があるっていうのよ…よっと」
 「グンデン・ダ・リーダが言うんだから、なにかあるのです。大丈夫ですよ」
 「飼い主に心酔してるね。この猫は」
 「しんすい」
 「信じ切ってるとか、そういう意味」
 「ごはんをくれるひとですから。にゃあっ」
 シンデレラとヴェルニーヤは、苦労しながら庭で蜥蜴を捕まえていた。ネズミの方は台所にしかけておいた罠にちょうど6匹かかっていたので、苦労せずに済んだ。
 まだ子猫のヴェルニーヤに大人のネズミは狩れない。そういう意味でも助かった。
そのヴェルニーヤは今、シンデレラと庭で蜥蜴取りに悪戦苦闘している。
 「取れた?」
 「はいっ」
 ヴェルニーヤの前足に押さえられてじたばたしている蜥蜴を、ひょいっとシンデレラは持ち上げてかごに入れた。
 「これで6匹か。案外見つかるもんだね。うちの庭って蜥蜴だらけだったのか」
 「シンデレラは蜥蜴が怖くないですか?」
 「なんで?」
 「怖い人も多いみたいだからです」
 「別に噛んだりしないでしょ。もう慣れたよ」
 実母が生きていた頃は蜥蜴を素手で掴むなど、およそ考えられなかった。この2年余りの間に自分もなかなか成長したものだと思う。
 「えらいです、シンデレラ」
 「おだてても何も出ないよ。さ、戻ろう」
 シンデレラは言い、勝手口に戻ることにした。


 「あ、お帰り」
 翠色の魔女は、さっきまでシンデレラが居た石段に座って待っていた。
 「取ってきたわよ、ネズミと蜥蜴」
 「ご苦労様。ついでにもう一つ用意してもらえないかしら」
 「何?」
 「かぼちゃ」
 「かぼちゃ?」
 「そう。なるべく大きいやつね」
 「あったかなー…」
 言いながらシンデレラは台所に戻っていった。
 「ヴェルもご苦労様」
 翠色の魔女は愛猫を抱き上げて撫でる。
 「僕はちょっとしかお手伝いしてないです。シンデレラが頑張ったです」
 「やっぱりねえ、幸せになる努力の方がやる気出るわよねえ」
 「だと思いますが…なんでですか?」
 「最初は『どうせ』とか言ってたけど、とりあえず私の言うことを素直に実行するようになったでしょ。やる気が出てる証拠じゃない。この調子で、是非ともロマンスを成就させてもらわないといけないわ」
 「よくわかりませんけど、僕はシンデレラに幸せになってもらいたいです」
 「そこは私も賛成よ。さて、久々にちゃんと魔法を使うかね」
 言いながら魔女はネズミと蜥蜴に向かって何事か唱えた。


 台所にあったかぼちゃには、今まさに包丁が入れられようとしているところだった。
 「待って!」
 シンデレラは慌てて料理番に頼む。
 「どうしたんですか…じゃない、どうしたんだ、シンデレラ」
 継母の言いつけにより、召使たちは父の前以外ではシンデレラに対して敬語で話すことを禁じられていた。同情し、ためらう使用人が殆どだったが、継母に逆らう事はできない。
 「そのかぼちゃ、頂戴」
 「え、で、でもこれは明日の朝のスープ用で…」
 「別のものにしてもらえないかしら。どうしてもこれが必要なの」
 「何に使うんだい?」
 何に、と聞かれたシンデレラは少し迷った。その後にっこり笑う。
 「なんだかね、私の幸せに使うらしいのよ」
 そういってかぼちゃを抱え、颯爽と去っていったのだった。
神崎 瑠珠 * 魔女とロマンスの詩 * 23:50 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

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