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魔女とロマンスの詩 〜グンデン・ダーリーダの物語(5)

 明々とかがり火が焚かれた城には、続々と花嫁候補たちの馬車が吸い込まれて行っていた。
 花嫁候補たちは城の庭で馬車から降ろされ、順番に城の大広間に入って行く段取りになっている。
 ただ、花嫁候補たちが城に入る前に渡されるものがあるところが、常の舞踏会とは違っていた。
1.

 シンデレラはかなり後の方に城門をくぐった。準備に時間がかかったから、これは仕方がない。
 「ではお嬢様、どうぞ」
 元蜥蜴の従者が馬車のドアを開け、恭しく頭を下げた。
 「行ってきます」
 やや緊張した面持ちで降り立ったシンデレラ。
 「お供いたしましょうか?」
 「城の中まで? いいわよ、別に。一人で行けるわ。待ってて」
 従者や親が付き添う他の娘たちの様を目にしながらもきっぱりと言うと、彼女は城に入った。
 「ようこそお嬢様。これをお持ちください」
 入り口に立っていた役人から渡されたのは、目の部分を中心に顔の半分を覆う仮面だった。役人自身も仮面を着けている。
 「これは…?」
 「ここでお着けください。王様からのご命令があるまで決して外されませぬよう」
 「は、はい」
 シンデレラが受け取ったのは白い仮面だったが、周りの娘たちはまたそれぞれ色が違った。どうやら様々な形や色があるようだった。
 さっぱり分からないまま着け、また別の役人に案内されるがままに城の中に入る。
 なんと娘たちやそのお付きだけではなく、城の者は全て仮面をつけていた。
 ―― どういうこと?
 周りの娘たちも訝しんでいる様子だった。どうやら何も聞かされていなかったようだ。
 大広間に到着すると、これがまたものすごい人数であった。色とりどりのドレスの波。
 入る前に娘たち以外の者は別室に通されたので、ここには純粋に花嫁候補しかいないはずなのだが、それにしても多かった。
 それでも入りきらないということはなく、ドレスの波にも関わらず狭いということもない。さすが王城である。
 シンデレラは適当に後ろの方に居た。周りが皆仮面を被っているので、どこの誰と気を遣うこともない。彼女にとっては気楽だった。
 そしてほどなく。
 「国王陛下並びに王妃殿下の、おなーりー!」
 大広間に設けられた壇上に、これまた仮面をつけた国王、王妃、そして役人があがった。
 広間は一斉に静まり返る。
 「これより、陛下より皆に直々にお言葉がある!心して聞くように」
 役人の一言により、静かな大広間に緊張が加わった。
 そして王の言葉が始まる。
 「皆のもの、本日はよく集まってくれた。これより、我が王子の花嫁選びを行う。
 それに際して皆に行ってもらいたいのが、まず『王子を探す』ことである。
 見ての通り、今日は城の者全員が仮面を被っていて、誰だか分からぬようになっておる。
 そなたたちはこれから、舞踏会が始まるまでに相手を探すのだ。
 宝物庫などいくつか立ち入ってはならぬ場所はあるが、それ以外はどこを探しても構わぬ。
 守らねばならないことは3つ。
 舞踏会が始まる号令がかかり、これと決めた相手とこの大広間に戻って、且つわしから許しが出るその瞬間まで互いの名は聞かぬこと。互いの名は口にせぬこと。仮面は取らぬこと。
 これらを守れなかった場合、即刻舞踏会への参加資格を失う」
 王の言葉の最中にも関わらず、ひそひそとした声が広まった。シンデレラとて、「なにそれ」と言いたくなるのを我慢していた。
 しかし王は、そんな娘たちの様子を見て、少し微笑んだようだった。そして続けた。
 「むろん、これだけの花の如き乙女が集まっておるのだ。我が王子だけに占有させるのはもったいない。選りすぐりの貴族や外国からの客も招いておる。王子と結ばれずとも、相応の相手に巡り会って良縁を結んでもらえれば、これほど嬉しいこともない。
 分かるな。そなたたちはこれから、運命の相手を探すのだ。それが偶然我が息子だった娘が、王子の妃になる。それだけだ」
 広場が一斉にどよめく。
 「それでは、はじめ!!」
 王子探しが始まった。


 「なるほど、ここの王様はなかなかロマンスというものがわかってるね」
 「そうなのですか?」
 魔女の言葉に、黒い猫はにゃぁと鳴いた。
 「運命の相手選びっていうのは、そうじゃなきゃ。片方だけが有利とは限らないの」
 「ふむー…」
 「さて、我らがシンデレラは無事王子様を見つけられるのかしらね?」
 「王子様、どこにいるんでしょうね?」
 「さ、どこだろうね?」
神崎 瑠珠 * 魔女とロマンスの詩 * 22:26 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

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