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王太子とヴァキアンの姫君(13)

ルイナンは寝所に居た。天蓋をぴっちり閉めて閉じこもっていて、その横にダリアがちんまりとひかえている。

「ダルリーヴ(王太子)。ジールでございます」
 ジールが小さく声をかけた。当然返事はない。
 「…ダリア」
 二度声をかけても無駄だと思ったジールは、早々にダリアに振ることにした。ところが、ダリアから出てきたのは意外な問いだった。
 「非礼を承知で二の大臣に伺いたいことがございます。宜しいでしょうか」
 「なんだ」
 「昨晩、ダルリーヴの御寝所にどこかの姫を連れていらしたのは、二の大臣…でしょうか」
 「何の話だ」
 「もういい!」
 ジールが答えた途端、天蓋の内側から罵声が飛んでくる。
 「…乱心ではないな。単に拗ねていらっしゃる」
 「そのようですね」
 ジールはイスハークとひそひそと言い交わした後、あらためてルイナンの方に向く。
 「ダルリーヴ。お捜しの姫は残念ながら私の差し金ではありません。詳しい事情をお聞かせ願えませんか。ご協力出来ることがあるかもしれません」
 「…」
 返って来たのは沈黙のみである。ダリアが、
 「恐れながらダルリーヴは既に多くの人々に説明をされ…その…」
 飽きて拗ねているのか。ジールはルイナンに聞こえないよう小さな溜息をついた。
 「ではお前からで構わない。説明をしてくれ」
 ダリアが一通り説明を終えると、ジールはさして考え込むでもなく言った。
 「祭祀所に参りましょう」 
 「…何でだ」
 やっと天蓋の中からまともな返事が聞こえた。少しだけすき間が空いて、ルイナンの目がのぞく。
 「これだけ様々な者に訊いて手がかりがその指輪一つである以上、性質の悪いジンニーア(女魔神)の仕業とも考えられます。また、恐れ多くもダルリーヴの御寝所に入り込むことが出来たとすれば、そちらの方が問題です。イスハーク、祭祀所の手配を。ムスティール殿に直接だ」
 「はい」
 心得たとばかりにイスハークは長身を翻して先に向かう。さ、とジールが眼鏡の奥からルイナンを見据えると、彼は多少ばつの悪そうな顔をしながら寝台から降りて来た。

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神崎 瑠珠 * 王太子とヴァキアンの姫君 * 22:12 * comments(0) * trackbacks(0) * - -

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